伝記
クレイティアス(クリティアス、クリティアとも表記される)は、古代アテナイの黒像式の壺絵師である。紀元前570年から前560年頃に活動したとされ、生没年は伝わらない。ギリシア語の署名ではクレイティアスの名で記されている。初期の黒像式を代表するアテナイの名匠とされ、署名のある作品としては、壺が五点、杯が二点、そして杯の断片が知られている。
署名の入った四つの壺と一つの陶器の台には、クレイティアスが絵付けをした画家であり、エルゴティモスが成形をした陶工であることを示す銘文が書かれている。このことから、二人の職人が密接に協力して制作していたことがわかる。二人は重要な創作の組だったと見られ、その製品はエトルリアにまで輸出された。署名のある作品は、ベルリンのゴルディオン出土の杯、フィレンツェのフランソワの壺、ナウクラティス出土の杯の断片(ロンドンの大英博物館所蔵)、ニューヨークのメトロポリタン美術館にあるヴァリ出土の台などである。様式の特徴から、ほかの断片や小さな器の絵も彼の作とされている。
クレイティアスの画風は、刻線の精密さと、ミニアチュールのような繊細さの中に見える暗色の澄んだ調子に特徴がある。輪郭が角ばっていることや目が横顔になっていることなど古拙の特徴は残るものの、描線の正確さは際立っていたと評される。
最もよく知られた作品がフランソワの壺である。これは黒像式の大型の渦巻き柄付きクラテルで、「クレイティアスが描いた」という署名があり、紀元前570年頃のものとされる。アテナイで作られた渦巻き柄付きクラテルとしては最古という。名は、1844年にこの壺を発見したアレッサンドロ・フランソワに由来し、発見場所はトスカーナ地方キウージ近くのエトルリア人の墓であった。高さは66センチメートル、最大周囲はおよそ2メートルあり、現在はフィレンツェの国立考古学博物館(4209番)が所蔵する誇りの品となっている。
装飾は帯状に水平に配され、六つないし七つの帯に二百を超える人物が描かれる。人物は銘文によって見分けられる。主題は、カリュドンの猪狩り、テセウスの功業、トロイア戦争の場面、パトロクロスの葬礼競技における戦車競走、トロイロスを襲うアキレウス、死んだアキレウスを運ぶ大アイアスなどである。さらに、ラピテス族とケンタウロスの戦い、ペレウスとテティスの婚礼に向かう神々の行列、ヘパイストスのオリュンポス帰還、ピュグマイオイと鶴の戦いのほか、スフィンクス、グリフォン、ゴルゴンも見られる。その様子から、ギリシア神話の百科事典のようだと評される。人物の数は、二百余りとも二百七十ともいわれる。
同じ年に亡くなった人物
- ヘルミオネのラスス (紀元前600)
- Phocylides (紀元前600)
- Battus I of Cyrene (紀元前600)
- ザレウコス (紀元前 600年(推定))
- Miltiades the Elder (紀元前600)
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