伝記
ディエネケスは、紀元前480年のテルモピュライの戦いに加わり、そこで戦死したスパルタの兵士である。名のギリシア語(ドーリス方言)の形は「絶え間ない、途切れない」を意味する語に由来するとされる。生年や出自、戦いに至るまでの経歴は伝わっておらず、その名はもっぱら最期の戦いと一つの逸話によって知られている。この戦いに加わったギリシア人の中で最も勇敢だったと称えられた人物である。
ヘロドトスは、ディエネケスについて次のような話を伝えている。トラキス出身の男が、ペルシア軍が矢を放つと、その数のあまりの多さに日光が隠れてしまうほどだと知らせた。ディエネケスはそれにひるまず、敵の大軍を少しも気にかけることなく、トラキスから来た客人はたいへんよい知らせを持ってきた、メディア人が太陽を隠してくれるなら、戦いは日向ではなく日陰でできるのだから、と言った。ヘロドトスは、ディエネケスがこのほかにも同じような言葉をたくさん口にし、そのために忘れられない人になったとも記している。
この言葉は別の形でも伝わる。ヘロドトスよりずっと後の時代のプルタルコスは、『スパルタ人の名言集』の中で、同じやりとりをディエネケスの指揮官であったレオニダス1世の言葉としている。兵士の一人が、異民族の矢のせいで太陽が見えないと嘆くと、レオニダスは、それなら日陰で戦えるのだからよいではないか、と答えたというのである。「それなら日陰で戦おう」という短く切れのよい言い回しは、のちにキケロが「それでは日陰で戦おう」とラテン語で引き、ウァレリウス・マクシムスも同様の形で伝えた。いずれの語り手でも、危機を前にして冗談で応じる、スパルタ人らしい簡潔な物言いの例として受け継がれた。
現在のスパルタの町では、レオニダスの墓の東にある通りにディエネケスの名が付けられている。また、後世の創作にもたびたび登場する。スティーヴン・プレスフィールドの小説『炎の門』(1998年)では主要人物の一人で、機知に富んだ短い言葉の名手として、また小隊を率いる優れた指揮官として描かれる。「戦争は仕事である」と説き、「恐怖を超える力」や「愛は恐怖の反対である」といった知恵を弟子に語る人物である。映画『300』(2007年)では、マイケル・ファスベンダーが演じるステリオスという人物が「日陰で戦う」という有名な台詞を口にする。さらにゲーム『アサシン クリード オデッセイ』(2018年)にも登場する。
同じ年に亡くなった人物
- エピアルテース (紀元前479)
- クレオンブロトス (摂政) (紀元前479年没)
- マルドニオス (紀元前479年没)
- アッピウス・クラウディウス・サビヌス・インレギッレンシス (紀元前 479年)
- 摩訶波闍波提 (紀元前 479年)
同じ地域に関係する人物
- カリストゥスのアンティゴノス (紀元前300)
- ディミトリオス・ロウンドラス (1971年没)
- デモクリトス (紀元前370年代没)
- トルミデス (紀元前447年没)
- ニコメデス (紀元前209)