HISTORICAL PERSON · 2018年没

イェンス・スコウ

デンマークの化学者。ナトリウム-カリウムポンプ(Na+/K+-ATPアーゼ)の発見により、1997年にノーベル化学賞を共同受賞した。オーフス大学で長く研究した。

生涯
2018年没
死亡地
デンマーク(中央ユラン地域 / オーフス)
出生地
デンマーク(レムヴィー)
出典
世界地図
デンマーク(中央ユラン地域)

伝記

イェンス・クリスチャン・スコウは、1918年10月8日にデンマークのユラン半島の町レムビで生まれた化学者である。裕福な家庭に生まれ、父マグヌス・マルティヌス・スコウは、木材と石炭を扱う事業を興し、母アン・マーグレーテは、父の死後にその事業を引き継いだ。15歳のとき、ジーランド島のハスレブにある全寮制の学校に入った。1944年にコペンハーゲン大学を卒業し、1954年に博士号を取得した。1947年からオーフス大学で働き始め、1977年に生物物理学の教授に任じられて、1988年に退職した。その後も、オーフス大学に研究室を持っていた。

スコウは1950年代の初めに、麻酔学を修めた。物質の麻酔作用は、細胞膜の脂質の層への溶けやすさと関連し、麻酔物質が、当時たんぱく質だと推定されていたナトリウムのチャネルを開く、と考えた。そして、この作用がナトリウムイオンの移動に影響して神経細胞を静め、麻酔の作用が表れる、と主張した。他の種類の膜たんぱく質も、麻酔物質が脂質の層に溶け込むことで影響を受けるはずだと考え、細胞膜に埋め込まれた酵素を直接調べて、その性質が麻酔物質の影響を受けるかどうかを確かめる実験を思いついた。そこで、カニの神経細胞のATPアーゼを観察した。

つまり、ナトリウム-カリウムポンプの単離そのものをめざしたのではなく、局所麻酔薬の作用の仕組みを明らかにしようとしていたのである。偶然に、生物学の最も重要な進歩の一つにたどり着いたといえる。酵素は観察できたが、その活性は変わりやすく、研究には高い活性の酵素が必要だった。ようやく彼は、ATPアーゼの活性が、ナトリウムイオンとカリウムイオンとマグネシウムイオンの比が、特定の値になったときに最も高まることを発見した。ナトリウムとカリウムがなければ働かず、その二つが酵素にとって欠かせないことも確かめた。この酵素は、ナトリウムイオンとカリウムイオンが細胞膜を通るときに、何らかの働きをしているのだと気づいた。そうした考えは何年も前からあったが、仕組みはまったく分かっていなかった。

発見を論文にまとめたときには、用心深く、酵素がイオンの移動に関係することだけを書き、「ナトリウム-カリウムポンプ」という言葉を題から外した。この時点では、発見の重要性に徐々に気づいていく段階で、その後も麻酔学の研究を続けた。1958年、コリンエステラーゼの研究結果を発表するため、ウィーンの学会に出席し、そこで、赤血球のナトリウム-カリウムポンプを研究していたロバート・ポストと出会った。ポストは、2分子のカリウムイオンが細胞内に入るのと同時に、3分子のナトリウムイオンが細胞の外へ出ることを発見し、今日ではポンプの阻害剤として知られるウアバインを使って、実験していた。ポストはスコウの論文を読んでいなかったが、ATPアーゼの実験の話に、興奮して聞き入った。そして、その酵素はウアバインで阻害されるかと尋ねた。スコウはその時点ではわからなかったが、すぐに研究室に電話して、実験を指示した。ウアバインは実際に酵素を阻害し、この酵素とナトリウム-カリウムポンプとが結びついた。

1997年、ナトリウム-カリウムポンプ、すなわちNa+/K+-ATPアーゼの発見により、ポール・ボイヤー、ジョン・E・ウォーカーとともにノーベル化学賞を受けた。2018年5月28日にオーフスで亡くなった。99歳だった。

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