伝記
コルドバのルブナ(ルブナ・アルクルトゥビーヤ)は、10世紀後半のアンダルスの知識人であり、数学者、詩人である。文章の質の高さと、諸学問に通じていたことで知られる。生まれながらの奴隷身分で、マディーナ・アッザフラーの宮殿で育ち、のちに宮廷でカリフ、ハカム2世の写字生の一員として働いた。没年は984年とされる。
生い立ちについては、ほとんど何もわかっていない。伝えられる話の多くは、11世紀のアンダルスで同じような立場にあった女性たちの事例をもとにした、歴史家や研究者の推測である。ルブナは、929年に始まったアブド・アルラフマーン3世の治世下、マディーナ・アッザフラーで生まれ、生まれたときから奴隷だった。グラナダ大学のホセ・ミゲル・プエルタ・ビルチェスは、ルブナの父がカリフのアブド・アルラフマーン3世であり、したがって16人いたその娘の一人だったと主張している。カリフの息子の名は11人分が記録に残るが、娘の名はヒンドとワッラーダを除いて記されていない。カリフの子は、通常は後宮で奴隷身分の母に育てられた。ルブナは生涯を通じて十分な教育を受けられたと考えられ、のちに宮廷の知識人、学者となった。奴隷を教育し、解放し、雇用することを宗教的な動機から奨励する風潮が、イスラーム支配のもとでは広まっていたという。
ルブナは、961年にカリフの座に就いたハカム2世の図書館で、写字生として働きはじめた。アラブの年代記によれば、ハカム2世の時代には、都市の一部の郊外だけで読み書きのできる女性が170人以上おり、貴重な写本の複製を担っていた。ハカム2世は父にならってルブナを解放し、専属の書記であり学者として任用した。写本を書き写した経験から図書館について深い知識を持っていたため、その管理も任された。ハカム2世が生前と死後に解放した人々は少なくとも100人にのぼり、ルブナもその一人である。図書館ではアルキメデスやエウクレイデスらの書を含む多くの写本を扱い、研究して注釈を書いた。ハスダイ・イブン・シャプルトとともに、少なくとも40万冊を蔵したというマディーナ・アッザフラーの有名な図書館をつくる原動力になったとされる。
歴史家ジョイス・E・ソールズベリーは、ルブナが宮殿の外の人々とも交わっていたと述べる。子どもたちに算数を教え、宮殿へ戻る彼女のあとを、子どもたちが九九を唱えながらついて行ったという。イブン・バシュクワールの『アンダルスの学者伝補遺』にも名がある。そこでは「聡明な書き手で、文法に通じ、詩人であり、算術に明るく、学識は広い。宮殿で彼女ほど高貴な者はいなかった」と評され、当時知られた最も複雑な幾何学や代数の問題を解く力があったとされる。
名前にはラブナ、ラバンナ、リバナなど異なる表記が伝わり、宮廷での役割や素性には疑問も多い。作家カミラ・シャムシーは、ハカム2世の時代に宮殿と書物の世界に結びつき、その知性と学識で記憶されるほどの存在であったことは確かだと述べる。一方、カイロ、ダマスカス、バグダードでの書物の収集まで担ったとする話は、長い旅が必要になるため、書記としての勤めと両立しないと考えられている。シャムシーはまた、ルブナは王宮の奴隷であった可能性が高く、書物の購入のためにファーティマ朝から招かれた人物だとする説とは異なると述べる。さらに、ルブナとファーティマという二人の女性が、一人にまとめられてしまった可能性も指摘している。
同じ年に亡くなった人物
- ヨハネス14世 (ローマ教皇) (984年没)
- Aethelwold of Winchester (984年)
- ブルッギン・イブン・ジリ (984年没)
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