伝記
アン・ライスは、2021年に没したアメリカ合衆国の小説家である。「ヴァンパイア・クロニクルズ」や「ザ・マミー」、「魔女の刻」シリーズなど、吸血鬼、ミイラ、魔女を題材にした作品で知られ、ホラー、ゴシック、ファンタジーの分野で書いた。主にゴシック系のサブカルチャーを支持する青年層に大きな影響を与え、またSMを主題にした作品も発表している。2002年12月9日に脳腫瘍で亡くなった詩人で画家のスタン・ライスの妻であり、作家クリストファー・ライスの母でもある。
ルイジアナ州ニューオーリンズに、郵便局職員の父ハワード・オブライエンと母キャサリンのもとに生まれ、本名はハワード・アレン・フランセス・オブライエンといった。アイルランド系カトリックの家庭で育った。幼い頃から男性的なファーストネームを気にしており、初めて入学したときにアンと名乗って以来、その名で通すようになった。5人姉妹の一人で、姉には作家のアリス・ボーシャートがいる。16歳のときに一家はテキサス州リチャードソンに転居し、地元の高校に在学中に将来の夫スタンと出会った。テキサス女子大学と北テキサス大学で学んだのち、スタンとともにサンフランシスコ州立大学に移り、学士号と修士号を得た。学部では政治学を専攻していた。
転機は、1972年8月5日に長女ミシェルを白血病で失ったことであった。これをきっかけに処女作『夜明けのヴァンパイア』を書き、1973年に脱稿して、1976年に出版した。「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズでベストセラー作家の仲間入りを果たした。1994年にはニール・ジョーダン監督、トム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラスらの出演で、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』が映画化された。脚本は自身が担当し、大ヒットして世界的に著名な作家となった。2002年には続編映画『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』も公開された。カトリックの影響を色濃く反映した独特の非日常的な世界観で根強いファンを得た一方、その世界観になじめない読者も多く、好みの分かれる作風であった。同シリーズには『ヴァンパイア・レスタト』『呪われし者の女王』『肉体泥棒の罠』『悪魔メムノック』『美青年アルマンの遍歴』などが続き、2012年以降も新作が出た。魔女の一族を描く『魔女の刻』とその続編『ラシャー』、キリストの生涯を題材にした連作、自伝的な告白の書も著している。実名のほか、アン・ランプリングとA・N・ロクロールという筆名でも作品を出している。25冊の本の総売上は1億3600万部に達するという。
1989年にスタンがサンフランシスコ州立大学の教授職を退いたのを機に、サンフランシスコ・ベイエリアを離れてニューオーリンズのガーデン地区に移った。スタンの死後の2004年には、住み慣れた家を売却し、息子の住むロサンゼルスに近いカリフォルニア州ランチョ・ミラージュに転居した。ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズの復興事業も強く支援した。
日本でも、「ヴァンパイア・クロニクルズ」から別名義の官能小説的なシリーズまで多数の作品が翻訳され、特に吸血鬼の表象に大きな影響を与えた。ただし「ヴァンパイア」シリーズは完訳に至らず、2003年以来、新たな翻訳は出ていない。版元は翻訳権の使用料の高騰を理由に、続きの出版は難しいと答えたという。
同じ年に亡くなった人物
- ロナルド・デフェオ・ジュニア (2021年没)
- ウェイン・ティーボー (2021年没)
- アイセイク・ダボア (2021年没)
- クリス・ディッカーソン (ボディビルダー) (2021年没)
- ヘルムート・ヤーン (2021年没)