伝記
バーナード・ローレンス・マドフ(通称バーニー・マドフ)は、1938年4月29日に生まれ、2021年4月14日に没したアメリカ合衆国の金融業者である。一時はナスダック株式市場の非常勤会長を務めたが、のちに世界史上最大のポンジ・スキームと、米国史上最大の金融詐欺を運営していたことが明らかになり、自らも告白した。
ニューヨークのクイーンズで、ユダヤ系アメリカ人の家庭に生まれた。祖父母の代に東欧から移民した一家で、父は配管工と株仲買人をしていた。高校卒業後はアラバマ大学を経てホフストラ大学に入り、政治学を学んだ。同じ高校に通う3歳下の女性と知り合い、ともに大学生のときに結婚している。1960年にペニー証券会社を設立し、これがバーナード・L・マドフ・インベストメント・セキュリティーズに発展した。同社は、小売りブローカーからの注文を直接執行して「専門業者」を介さない、ウォール街でも有数のマーケットメーカー事業を営んだ。兄のピーターを専務取締役兼最高コンプライアンス責任者に、兄の娘シャナを規則・コンプライアンス責任者に据え、息子のマークとアンドリューも雇った。長年、マドフは資金運用の力を持つと称賛され、ニューヨークの富豪の多くが信頼できる投資家とみなした。2001年までは、ナスダックの3大立役者の一人に数えられていた。ただ、あまりに高い利回りを疑う投資家もおり、大手の監査法人が監査していないことに疑問を抱いて投資を見送った人もいた。
2008年、サブプライムローン危機による株価下落を受けて、複数の投資家から計約70億ドルの払い戻しを求められたが、マドフは現金を用意できず、不正を隠しきれなくなった。12月10日、息子たちが当局に、父が資産運用部門は大規模なポンジ・スキームであり「大きな嘘」だと語ったと伝えた。翌11日、FBIが証券詐欺の罪でマドフを逮捕した。調査では、10パーセントを上回る高利回りをうたって資金を集めながら、実際には運用せず、新しい資金を既存の顧客への配当に回して損失を隠していたことが明らかになった。逮捕当初は「顧客は25名ほど」と偽ったが、被害者は数千人に及んだ。スティーヴン・スピルバーグやケヴィン・ベーコンといった著名人、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、BNPパリバ、野村證券など内外の金融機関も被害を受け、ユダヤ人の慈善団体や学校も資金を失った。口座から消えた金額は捏造された利益を含め650億ドル近く、実際の損失は管財人の見積もりで180億ドルとされる。詐欺は1990年代初頭に始めたと本人は述べたが、連邦当局は1980年代半ば、早ければ1970年代にさかのぼるとみた。証券取引委員会は、職員が少なくとも1999年から不正の情報を得ながら報告がなされていなかったことを明らかにし、その怠慢が不正を助長したと欧米メディアで指摘された。
2009年3月12日に11の連邦重罪を認め、6月29日に最高刑の150年の禁固刑を宣告された。ノースカロライナ州の刑務所に服役し、同年12月には、かつてマドフに投資して損をした受刑者に殴られ、鼻の骨や肋骨を折る事件も起きた。2010年12月11日、父の逮捕からちょうど2年のこの日に、長男のマークが自宅で首を吊って死んでいるのが見つかった。次男のアンドリューも2014年に悪性リンパ腫で48歳で亡くなった。兄弟は、逮捕間近の父の告白で詐欺を知ったと語っていた。2021年4月14日、ノースカロライナ州バトナーの連邦医療センターで自然死した。事件はテレビドラマ「嘘の天才」やドキュメンタリー作品の題材にもなった。
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